CCS事業の概要
CCS(Carbon Capture and Storage)は、排出された二酸化炭素(CO2)を回収し、地中や海底に貯留する技術で、地球温暖化を抑制するための重要な手段とされています。産業界や政府の支援を受け、CCSは世界中で実証および商業化プロジェクトが進行しています。
世界のCCSプロジェクト5選
- ノルザーン・ライツ(ノルウェー)
- CO2を液化し、北海の地下貯留層に貯留。
- 年間最大150万トンのCO2を貯留可能。
- 国際的なCO2貯留ハブとして期待される。
- スレイプナーCCSプロジェクト(ノルウェー)
- 1996年から稼働している世界初の商業規模CCSプロジェクト。
- 海底ガス田で発生するCO2を地下に貯留。
- 年間約100万トンのCO2を削減。
- ペトラノバプロジェクト(アメリカ)
- テキサス州の石炭火力発電所からCO2を回収し、地下に貯留。
- 年間約140万トンのCO2を削減可能。
- 原油回収率を高める「EOR(Enhanced Oil Recovery)」を併用。
- クイーンズランドCCSプロジェクト(オーストラリア)
- 石炭火力発電から排出されるCO2を貯留する実証プロジェクト。
- 2022年以降の商業化を目指し展開中。
- イルサットCCS(カナダ)
- 石油精製所で発生するCO2を回収。
- これまでに300万トン以上のCO2を貯留。
- 地下貯留の安全性と経済性を評価するモデルケース。
日本のCCSプロジェクト5選
- 苫小牧CCS実証プロジェクト(北海道)
- 日本初の大規模CCS実証プロジェクト。
- 2020年までに30万トンのCO2を貯留し、安全性を検証。
- 中部電力のCCS実証(愛知県)
- 火力発電所からCO2を回収する技術開発。
- 中部電力は、CCSを将来の電力供給の脱炭素化に活用。
- CCSのための南海トラフ貯留層調査
- 南海トラフ地域での地質調査を実施。
- CO2貯留の長期的な安全性と安定性を研究中。
- 長崎県西海市におけるCCS研究
- 火力発電所近辺でのCO2回収・貯留の実証。
- 地元産業と連携し、持続可能なCCSモデルを構築。
- 新潟県CCUS実証プロジェクト
- 石油・天然ガス田を利用したCCSおよびCCUS(回収したCO2の有効利用)。
- 日本でのCCUS事業の先駆けとされる。
CCSの課題
CCS技術は温室効果ガス削減に貢献する可能性がある一方、いくつかの課題を抱えています。
1. 高コスト
CCSの導入コストは非常に高額で、特にCO2の回収・輸送・貯留プロセスにおいて多額の資金が必要です。これが、CCS普及の大きな障壁となっています。
- CO2回収コスト:産業施設の種類や排出量により異なるが、1トン当たり30~100ドル。
- 貯留コスト:地質条件や輸送距離によって変動。
2. 社会的受容性
CO2の地下貯留は、地震や漏出への懸念から地元住民の反対に直面することがあります。特に日本のような地震多発国では、貯留層の安全性への疑問が根強いです。
3. 規制と政策の整備不足
CCSの適切な運用を確立するための法律や規制が各国で不十分です。貯留されたCO2の長期的管理や漏出時の責任分担が課題です。
4. 技術的な課題
CO2を高効率で回収する技術や、長期的に安全に貯留するための地質学的知見が未だ発展途上です。また、貯留施設の設計やモニタリング技術も改良の余地があります。
5. 経済的持続性
再生可能エネルギーのコスト低下や、他の温室効果ガス削減技術(再生可能エネルギーや水素利用)の進展により、CCSの競争力が相対的に低下する可能性があります。
まとめ
CCSは、温室効果ガス削減の切り札として注目されていますが、課題を克服するには、技術革新、政策支援、社会的受容の促進が不可欠です。特に、ノルウェーや日本の具体例に見られるように、国際的な知見共有と地域特性を活かした戦略的アプローチが重要です。今後、CCSがどのように進化し、地球温暖化対策に貢献していくかが期待されます。
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