Ryu's Blog

Sustainability(持続可能性)に関心のあるRyuのブログ


米DAC新興エアルーム・カーボン・テクノロジーズ 20241206


三菱商事など4社がDACの米新興に出資したとの報道を受けて、業界の全容をまとめてみた。

直接空気回収(DAC)の技術:歴史、現状、課題、主要プレイヤー比較

1. DACの歴史

直接空気回収(Direct Air Capture, DAC)は、大気中のCO₂を直接回収する革新的な技術であり、気候変動への対応策として注目されています。

  • 2000年代初頭
    DACのコンセプトが科学界で議論され、気候工学の一部として注目を集め始めました。
  • 2009年~2010年代
    初期のスタートアップ企業が設立され、技術開発が本格化。小規模プラントで実証実験が行われました。
  • 2020年代以降
    各国が「ネットゼロ」目標を掲げる中で、DAC技術が商業規模へと拡大し、大規模プロジェクトが次々と進行中です。

2. 現状

DACは急成長している分野であり、以下のポイントが挙げられます:

  • 市場規模
    2021年には約14.37キロトンのCO₂を回収しており、2050年には年間9億4,000万トンに達すると予測されています。
  • 技術進展
    各企業が異なるアプローチでCO₂の回収に取り組んでおり、効率性やコスト面での改善が進んでいます。
  • 主要プレイヤー
    世界各地で事業を展開する企業が技術競争を繰り広げています。

3. 主要プレイヤーとの比較

エアルーム・カーボン・テクノロジーズとDACの主要プレイヤーとして、カーボン・エンジニアリング、クライムワークス、グローバル・サーモスタットの4社を比較します。

項目エアルーム・カーボン・テクノロジーズカーボン・エンジニアリングクライムワークスグローバル・サーモスタット
創業年2020年2009年2009年2010年
所在地アメリカ・カリフォルニア州カナダ・ブリティッシュコロンビア州スイス・チューリッヒアメリカ・ニューヨーク州
従業員数非公開非公開約300名非公開
技術の基本原理鉱物を利用したCO₂吸収液体吸収剤を利用固体吸着剤を利用固体吸着剤を利用
CO₂除去コスト目標1トンあたり約50ドルを目指す商業規模で削減を目指すコスト削減の詳細は非公開商業規模で削減を目指す
主要プロジェクト例米国初の商業用DACプラント稼働開始テキサス州で大規模施設計画中アイスランドのOrcaプラント運営投資拡大中
年間CO₂除去能力開発中数百万トンを目指す現在最大3万6,000トン数十万トン目標
特筆すべき投資や提携大手投資ファンドからの支援を受ける石油・ガス企業からの投資欧州での商業展開を進める東京ガスなどとの提携
主な用途炭素除去CO₂再利用・除去炭素除去炭素除去

4. 課題

DAC技術は将来性が高い一方で、以下の課題があります:

  1. コストの高さ
    CO₂回収には1トンあたり数百ドルのコストがかかり、さらなる低価格化が必要です。
  2. エネルギー消費量
    DACプロセスには膨大なエネルギーが必要で、再生可能エネルギーの利用が不可欠です。
  3. 貯留と利用の課題
    回収したCO₂の貯留場所や再利用方法が十分に整備されていません。
  4. 規模拡大の課題
    ネットゼロを達成するには年間数十億トンのCO₂除去が必要であり、大規模展開が急務です。
  5. 社会的認知と政策支援
    DACの認知度が低く、政府による補助金や炭素価格政策が重要です。

5. 今後の展望

DAC技術の未来には次のような可能性が期待されています:

  • 技術革新
    効率的なプロセスや新材料の開発により、コスト削減が進むでしょう。
  • 政策支援と規模拡大
    政府の支援や企業間の連携を通じて、より多くのプラントが設立されると考えられます。
  • グローバルなインフラ整備
    CO₂貯留施設や輸送ネットワークが構築され、DAC技術が気候目標達成の重要な柱になるでしょう。

結論として、DACは現在の気候危機を解決するための有力なツールであり、引き続き投資と技術革新が求められる分野です。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP