碧南火力発電所の概要
日本最大の石炭火力発電所であり、かつ、最新の取り組みを進めている日本最大の発電会社JERAが保有する碧南火力に関する記載。
1. 所在地と基本情報
- 所在地:愛知県碧南市港南町二丁目8番地
- 運営者:中部電力
- 運転開始:1983年(昭和58年)
- 発電方式:超々臨界圧(USC:Ultra Super Critical)石炭火力
- 総出力:410万kW(5基)
- 年間総発電量:約300億kWh
- CO2排出量:約2,300万トン(日本全体の約2%)(2021年度)
碧南港に隣接し、燃料の石炭は主に海外から船舶で輸入されています。中部地域の電力供給を支える基幹発電所です。
2. 技術的特徴
- 高効率技術:超々臨界圧技術により発電効率を向上。
- 環境対策:
- 脱硫装置・脱硝装置により、SOx(硫黄酸化物)やNOx(窒素酸化物)を削減。
- 高効率燃焼によりCO2排出量を抑制。
- 排煙処理:集塵装置や最新の排煙技術を導入し、大気汚染を最小限に。
3. アンモニア混焼実証試験の状況
碧南火力発電所では、脱炭素社会の実現に向けて、石炭火力におけるアンモニア混焼技術の実証試験が進行中です。
目的
- CO2を排出しないアンモニア燃料を石炭に混ぜることで、既存インフラを活用した脱炭素化を実現する。
進捗状況
- 2021年:小規模燃焼試験を開始。
- 2023年:20%混焼技術の実証を開始。
- 2030年目標:アンモニア混焼率を50%以上に向上させ、専焼技術(アンモニア100%燃焼)の基盤を構築。
二酸化炭素の削減効果
- 混焼率20%の場合:年間約40万トンのCO2削減(1基あたり)。
- 碧南火力の全基に適用した場合、年間約200万トンの削減が見込まれます。
- 混焼率50%の場合(2030年目標):年間約100万トンのCO2削減(1基あたり)。
- 全基に適用時には年間500万トンの削減が期待されます。
環境対策
- 燃焼時に発生するNOx(窒素酸化物)を抑制するための燃焼制御技術を同時に開発中。
課題
- アンモニアの低発熱量への対応(燃焼効率の向上)。
- 燃料供給設備の安全性確保とコスト削減。
4. 環境への取り組み
環境負荷軽減のため、以下の取り組みを実施:
- 植樹活動や地域との協力による生態系保全。
- 再エネ導入の検討を進め、燃料転換の選択肢を広げています。
5. 将来展望
碧南火力発電所では、国のカーボンニュートラル政策(2050年目標)に基づき、次のような展望が描かれています:
短期目標(2025年まで)
- アンモニア混焼率20%の商業運用を開始。
- CO2削減効果を具体化し、費用対効果を検証。
中期目標(2030年)
- 混焼率50%の実現。
- 碧南火力をモデルケースとした全国的なアンモニア利用展開。
- 年間500万トンのCO2削減(全基適用時)を目指す。
長期目標(2040年以降)
- アンモニア専焼(100%利用)技術の確立と実用化。
- 中部電力エリア内の火力発電所でのアンモニア燃料普及。
- 国際的なアンモニア供給網の構築を推進。
碧南火力の実証成果は、日本国内だけでなく、世界的なエネルギー転換モデルとして期待されています。
この概要により、碧南火力発電所が持つ現在の役割と、脱炭素化に向けた技術的革新の進展が具体的に示されています。
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