1. CCSとは何か？

CCS（Carbon Capture and Storage）は、二酸化炭素（CO2）を大気中に放出する前に回収し、地下深くに安全に貯留する技術です。これにより、発電所や産業施設からのCO2排出を大幅に削減し、気候変動を抑制することができます。CCSは特にカーボンニュートラルを実現するための重要な技術と位置付けられています。

2. CCSの実例

CCS技術は世界各地で稼働しているいくつかのプロジェクトで実証されています。

• Boundary Dam（カナダ）: 石炭火力発電所にCCS技術が導入され、CO2を大規模に回収。

• Sleipner（ノルウェー）: 北海ガス田でのCO2回収と地下貯留プロジェクト。

• Petra Nova（アメリカ）: 世界最大規模のCCSを搭載した発電所プロジェクト。

3. 日本におけるCCSの現状と今後の計画

日本では、政府主導の下でいくつかのCCS実証プロジェクトが進行中ですが、大規模な商業化には至っていません。将来的には、CO2を多く排出する産業分野での技術導入が必要とされています。日本政府は脱炭素社会の実現に向け、2030年および2050年に向けたCCS導入の拡大を計画しています。

4. CCS分野の先進企業

CCS技術を先導する世界的企業は以下の通りです。

• Equinor（ノルウェー）: SleipnerなどのCCSプロジェクトを実施し、業界をリード。

• Shell（オランダ）: Questプロジェクトを含む大規模CCS活動を行う。

• ExxonMobil（アメリカ）: 多数のCCS技術プロジェクトに投資しており、持続可能な未来に向けた取り組みを強化。

5. 日本のCCSスタートアップ

日本のCCS技術に関わるスタートアップ企業も登場しており、以下のような企業が活躍しています。

• Carbonium: CO2を燃料や化学品に変換する技術の開発を進めている。

• CO2テクノロジーズ: 低コストでのCO2回収技術を提供し、幅広い産業に普及を目指す。

• Blue Planet Japan: CO2を利用したカーボンネガティブのコンクリートを開発。

6. CCSが普及するための必要規模

CCSの普及には、国際的なCO2排出削減目標を達成するために、かなりの規模が必要です。

• **IEA（国際エネルギー機関）**によると、2030年までに年間15億トンのCO2を回収し、2050年までには75億トンを回収する必要があります。

• IPCCの報告では、1.5°Cの気温上昇を抑えるために、2050年までに年間最大で数十億トンのCO2がCCS技術で削減される必要があるとされています。

7. CCS普及のコストと課題

CCS技術の普及にはいくつかの課題があり、特にコスト削減と大規模導入が鍵となります。

• 1トンのCO2を回収するコストは、50～100ドルの範囲であり、これが低減されることが求められています。

• 政府の支援が不可欠であり、補助金や炭素価格制度などの導入が、企業による技術の導入を後押しします。

• 企業側では、CCS技術の商業化に向けた技術革新や、CO2を再利用するCCUS（Carbon Capture, Utilization, and Storage）の取り組みも重要です。

8. CCS技術普及に向けた課題

• 技術的な課題: CO2の長期貯留に関する安全性、技術の効率化が必要。

• 社会的な受容性: 地下貯留施設の設置に対する地域住民の理解と協力が不可欠。

• 資金調達の問題: 大規模なCCSプロジェクトのための資金が必要で、国際的な協力や投資が重要。

9. 今後の展望と目標

IEAは2030年までに1,000を超えるCCS施設が稼働し、2050年までに世界のCO2削減の10～15%をCCSが担うと予測しています。また、CCUSの普及により、CO2削減と同時に経済的利益を生み出す新たなビジネスモデルが広がることが期待されています。

まとめ

CCSは、特にエネルギー集約型産業やCO2排出量の多い地域で、気候変動対策の最終手段として重要な技術です。2030年および2050年までの気候目標を達成するためには、政府と企業が連携し、技術革新、コスト削減、社会的な受容性の向上が求められています。